フェライトコアのノート

revised Jan. 4, 2008,
revised Mar.16, 2008.

FB801入手。フェライト #43材、μi = 850, AL = 1565 [nH/turn2], 外径 7.5mmφ、内径 2.4mmφ、長さ 7.5mm のトロイダルコアである。

インダクタンス係数(Inductance factor) AL さえ分かってれば、 所定のインダクタンス L をもつコイルを作るのに何回巻けばいいかは容易に分かる(sqrt(L / AL))から、 ここまでは「勉強」というほどのものはない。飽和限界とかを計算するのにちょっと。

この先の一連の流れで気を付けるべきは、透磁率 μ が定数でないことだ。

Notations

巻き数 N [turn]
T もしくは turn という単位をもつが MKSA単位系的には無次元数なので、 次元解析して左右両辺合わす時にヘンなとこで神経を使う。以下でも暗黙のうちに式の左右を渡り歩いてるので注意。 ET積での項が典型的だが、ET積の単位は [V*us] なのに例として挙げた FB801 の "ET積" の単位は "[V*us/turn]" である。 線を巻くまでは N が変数のままだから 8.式の右から左に移った。
真空の透磁率 μ0 = 4π * 10-7 [H/m].
以下、なにげに MKSA単位系でない単位がはびこるので 10 のベキの値には注意。 そういえば比透磁率μも無次元数だな。
磁心定数 (core constant) C1 [cm-1]
磁束経路 / 断面積 で求まるコア形状由来の定数。C1 = (μ*μ0)/AL が成り立つ。 この式、左辺は定数だが右辺は μ も AL も勝手きままに動く。μ0を展開して通常使う単位系では
C1 [cm-1] = (μ * 4π)/AL [nH/turn2]   ... 1.
つまり AL = 1565, μ = 850 なら C1 = 6.83 [cm-1].
エアコアインダクタンス Lo
コアが真空(or 空気)だとしたときの(形状だけできまる)インダクタンス係数。 実際に空芯でコイルを作った時の AL がこうなるという意味ではない。透磁率が低すぎて磁束が洩れまくりだから。 これは洩れがゼロとした時の仮想値。トロイダルコアの場合で
Lo [nH] = 4.6 * log10(外径/内径) * コア高さ[cm] * N2   ... 2.
FB801 では Lo = 1.71 [nH/turn2] ほど。AL = 1565 なら透磁率 μ = AL/Lo = 910, 誤差 ... にしては心持ち大きいかな。850 はちょっち過小評価気味ということで。... 実際、もうすこし大きいっぽいな。
実効磁路長 le [cm]、実効断面積 Ae [cm2]
C1 = le / Ae を満たす。 実効磁路長は内周ぎりぎりの最短路に近く(電流密度が高いから)、そしてむしろ le, Lo, C1 から Ae を逆算する。
FB801 ではそれぞれ Ae = 0.15 [cm2], le = 1.0 [cm] とみておく。le はもっと小さいかも。
単位長さあたりインピーダンス K
(43材の平均位相角対周波数) があったので。インピーダンス Z = K*Lo となる、コア材質で決まる定数。 つまり、インピーダンスをコア材の項と形状の項に分けたということ。
#43材では 50(1MHz) - 220(10MHz) - 530(100MHz) - 580(500MHz) [108Ω/H] あたり。 インダクタンスが周波数によらない定数なら K は周波数に比例するはずで、にもかかわらず 10MHz を越える周波数にたいしてほぼ変化しなくなることに注意しておく。
損失角 δ
arctan(インピーダンスの実部 / 虚部)。実際には (tan δ)/μ の形で表になっていることが多いが。 #43材で 15度(1MHz) - 40度(10MHz) - 45度(15MHz)、 いずれにせよインダクタとして使うなら #43材では 10MHz を越えられないということ。

磁束密度 B 限界と磁界 H 限界

B = μ*μ0H なのでμが定数ならどちらか一方があれば足りる訳だが、「限界」周辺ではμもまた大きく変化する。

磁束密度 B について 1.414*E = N * 2π * f * Ae * B が成り立つ。 f: 周波数 [Hz] 、E: 電圧で 1.414倍なのは単に波高値にしておくため。つらつらと式変形して

B [gauss] = (108 * E [V]) / (4.44 * N * f [Hz] * Ae [cm2])   ... 3.
#43材での限界(表: 材料の磁気特性) が 2350 [gauss]、f = 1MHz として E/N = 18.3 [Vrms/turn] を得る。一方、
H [oersted] = 0.4 * π * N * I [A] / le [cm]   ... 4.
において #43材での限界が 10 [oersted] なら I*N = 7.96 [A*turn] を得る。

1turn 時、AL から求まる FB801 のインダクタンスは 1.5uH, 1MHz では XL = 8.2Ω、 したがって 8A 流したときには 65V かかっているはずであり、この両者の限界は一致しないように見える。

実際にはヒステリシスの表 (材料特性(43材) Hysteresis Loop) にあるように、B [gauss] = 850 * H [oersted] と比例すべきところ 2000gauss以上で磁束密度のグラフが寝て、 2500gauss あたりで 10oersted に到達するようになっている。 このあたりでは μ = ΔB/ΔH = 40 程度で、つまりインダクタンスは 0.1uH 位に抜けた。

インダクタとして大人しく使うには 18V で 2500gauss になった時のほうを限界として採用する。
たとえばトランスとして使うことを考えると、一次電流によって磁界が発生し、それが磁束変化をうみ、二次電圧の変化にいたるという道筋において 飽和していると磁界が変化しても磁束密度が変化しなくなるため、二次側にエネルギーが伝達されていないということになる。 「電流を流しても大丈夫」というだけでは意味がない。

ET積

まず、先ほどの磁束密度の式(3.式)が少しアヤシイので導出しておく。

電圧と磁束密度の関係 E = - N * Ae * dB/dt に E = √2 * Erms * sin(2*π*f*t) を代入、両辺を半周期積分して

√2 * Erms/(π*f) = N * Ae * (Btop - Bbottom)   ... 5.
を得る。cgs単位系に換えて
Erms * 108/(2.221 * f * N * Ae [cm2]) = (Btop - Bbottom) [gauss]   ... 6.
磁束密度飽和 BSAT で上下をおさえる、つまり Btop = - Bbottom < BSAT から
Erms * 108/(4.442 * f [Hz] * N * Ae [cm2]) < BSAT [gauss]   ... 3'.
かくして 3.式を得た。 一方、正弦波でなく電圧がパルス波形 (E [V] が T [s] 続く) とすると、両辺を 0 〜 T だけ積分して 5.式のかわりに
E*T = N * Ae * (Btop - Bbottom)   ... 7.
を得る。Bbottom = 0, Btop < BSAT とし、単位系を設定して
E*T [V*us] < 1/100 * N * Ae [cm2] * BSAT [gauss]   ... 8.

右辺はコイルの形状、材質によってきまる定数であって回路によらない。これを ET積という。FB801 で 3.5 [V*us/turn] ほど。 導出過程から明らかに磁束密度限界の式と同等で、どちらか一方でチェックすれば良いことになる。 ただし、 Bbottomの処理が 3'.式と 8.式で違うことには注意せよ。 ET積算出のときはパルスが無いときにマイナス側に磁束飽和していることを許していない。

8.式の実効断面積を断面積でおきかえ、過大評価になったぶんを磁束密度限界(2350) を 2000と小さくすることで補って

E*T [V*us/turn] = (外径 [mm] - 内径 [mm] ) * 高さ [mm] * 0.1   ... 9.
という式を暗算用に作っておく。FB801 で 3.8 [V*us/turn] という評価になる。まだ1割くらい大きいが、まあよかろ。 どうせヒステリシスループが大きくなるのを避けるために実用には 2 で割って使うし。

ついで。磁界のほう(4.式)も導出しておく。

無限ソレノイドの磁界 H = I*n; ここで n [turn/m] はソレノイド 1m あたりの巻数、に対し n = 100*N/le [cm] を代入して

H [A/m] = 100/le [cm] * N * I   ... 10.
単位系を cgs として
H [oersted] = 4π/1000 * 100/le * N * I = 0.4*π * N * I / le [cm]   ... 4'.

てことはつまり、無限ソレノイドと違いコア内部で磁界が一定でないトロイダルコイルでは限界算出の時は ほんとは実効磁路長 le で計算するのではなく最短磁路使って評価しないと安全ではないな。ほとんど違いはないが。 ... で、実効磁路で計算すると実効断面積内の平均値を評価したことになる、でいいのかね。
磁界限界 H = 10 [oersted] として電流限界の暗算用、

I * N [A*turn] = 2.5 * 内径 [mm]   ... 11.
飽和しきったあとの限界点であり、永久磁化や熱的破壊の可能性があるので実用には 2〜5 で割るものとする。

さらについで。9.式と 11.式を掛けると N の項を消すことができる。

E*T*I [V*A*us] = 内径 * (外径 [mm] - 内径 [mm] ) * 高さ [mm] / 4   ... 12.
断面積 [mm2] = (外径 [mm] - 内径 [mm] ) * 高さ / 2 を代入して、P [W] = E*I と合わせ、
P*T [W*us] = 内径 [mm] * 断面積 [mm2] / 2   ... 13.
次元的には耐電力 ∝ コア質量 という、まー当然だろみたいな帰結の式だが、定量化されているところに有難味がある。

その「ほぼ」の部分について。13.式の右辺は体積の次元をもち、 したがって比重が事前に与えられれば質量の次元量に変換することもできるが、 これはコアの質量とは直接関係がない。コア断面の高さ-幅比によってコアの質量は変わる。
そして同じ許容電力でコア質量を小さくしようとすると、断面形状は縦に長くなる(というか、幅ゼロが最適解)。 このあたり、2.式よりも事情は極端だ。

B原理主義

真空中での無限ソレノイドの磁束密度の式 B = μ0*n*I だからといって物質中について B = (μ*μ0)*n*I から解こうとしたりしないこと。こういう非線型項は おもてから消しておくにかぎる。両辺を μ*μ0 で割って H について解くのは、つまりそういう話。

References


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